Bering Note – formerly 流沙河鎮

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OpenSearchCon Europe 2026「基調講演オープニング:検索のモダナイゼーションとベクトルデータベースの現在地」- Bianca Lewis, OpenSearch Software Foundation

OpenSearchCon Europe 2026のセッション「Keynote: Opening Remarks」をまとめます。

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スピーカー

この基調講演のオープニングは、OpenSearch Software Foundation の Executive Director を務める Bianca Lewis 氏が登壇しました。OpenSearch コミュニティの運営を統括する立場から、プラハで開催された OpenSearchCon Europe の開幕にあたり、会場案内やスポンサー紹介を行っています。
対談ゲストとして登壇したのは、S&P Global で Director of Data, AI, and Analytics を務める Jim Curtis 氏です。データベースと検索市場を継続的に調査しているアナリストで、講演に合わせて検索のモダナイゼーションに関するレポートを公開しました。本セッションでは、その調査知見をもとに市場動向を解説しています。

プラハで迎えた OpenSearch コミュニティ5周年


OpenSearch は2021年に誕生し、このプラハでの OpenSearchCon Europe の開催年で5周年を迎えます。2021年当初から OpenSearch を使ってきた人が会場に少なからずいることが、このプロジェクトがヨーロッパのコミュニティに根付いてきた証になっています。

カンファレンスを支えるスポンサーのうち、ゴールドスポンサーとして AWS と Adeptic Reply が名を連ねています。

シルバースポンサーは NetApp Instaclustr です。マネージドサービスやインフラの提供を通じてコミュニティを支えています。

ブロンズスポンサーには Aiven、Big Data Boutique、Eliatra、Hyland が参加しています。Eliatra は OpenSearch のエキスパートを掲げる企業で、こうした多様なベンダーの関与がエコシステムの広がりを示しています。

参加者のバッジ裏には QR コードが付いており、スケジュール、WiFi、ソーシャルチャンネル、オンサイトのリソース、そして Code of Conduct(行動規範)へアクセスできます。行動規範の要点はシンプルで、参加者の誰もが歓迎され、リラックスして楽しみ、互いに敬意を払うことに尽きます。

初日の目玉として3つの催しが用意されています。Moravia 1-3 で12:20から開かれる Better Together Lunch Group では昼食をとりながらネットワーキングができます。Bohemia 1 で13:30から行われる Unconference Session は参加者自身がアジェンダを決められる形式です。そして17:20から始まる Search Party は Solutions Showcase を兼ねた懇親イベントで、初日の締めくくりとして定着しつつあります。

すべてのデータベースがベクトル対応になった市場


かつての検索は、データを適切に構造化しておかないと、まったく見当外れの結果が返ってくるという課題を抱えていました。検索したい言葉を正確に言い当てるために苦労していた時代です。そうした状況から検索は大きく進歩し、いまではモダナイズされた検索が、ユーザーが何を探すべきかを示してくれるところまで来ています。誰も昔のやり方に戻りたいとは思っていません。
検索はいま大きな転換点にあります。技術そのものの進歩に加え、AIの影響がその変化を加速させています。

かつての検索は、データを適切に構造化しておかないと、まったく見当外れの結果が返ってくるという課題を抱えていました。検索したい言葉を正確に言い当てるために苦労していた時代です。そうした状況から検索は大きく進歩し、いまではモダナイズされた検索が、ユーザーが何を探すべきかを示してくれるところまで来ています。誰も昔のやり方に戻りたいとは思っていません。
検索はいま大きな転換点にあります。技術そのものの進歩に加え、AIの影響がその変化を加速させています。

導入した半数、できていない半数を分けるもの


2025年初頭の予測どおり、年末までにほぼすべてのデータベースベンダーがベクトルデータベースベンダーになりました。市場には300を超えるデータベースベンダーが存在し、NoSQL、SQLリレーショナル、オープンソースが入り混じっています。当初はベクトルデータ型に注目し、それを扱える企業を追跡していました。ベクトルはセマンティック検索を可能にし、RAG(Retrieval-Augmented Generation、外部データを検索して生成AIの回答に反映させる手法)のシナリオを満たすため、重要性が高かったからです。その勢いはやがて顕著なものになりました。
いまやベクトル対応はほぼ普遍的です。何らかの形でベクトルをサポートしないベンダーと話すことはめったにありません。実装内容はベンダーごとに異なり、ニュアンスの違いはあるものの、大半はすでに備えています。備えていない場合は、何か特殊な事情があるくらいです。

Jim Curtis 氏が S&P Global からまとめたレポートは「From lexical to semantic: How vector databases enhance enterprise search」と題されています。レキシカル(語彙的なキーワード一致)からセマンティック(意味ベース)へ、エンタープライズ検索がどう移行しているかを扱った内容で、451 Research の特別レポートとして Linux Foundation の依頼により公開されました。会場では QR コードからレポートへ直接アクセスでき、調査の数値や考察をそのまま読めます。

レキシカルとセマンティックの融合が生む性能


レポートが描く市場の状況は、3つの数字に集約されます。1つ目は、エンタープライズの35%がデータアクセスの不足をAI導入の大きな阻害要因に挙げ、40%超がそれを「追加の対応を要するほど深刻」と捉えている点です。2つ目は、ベクトルデータベース市場が今年42億ドル規模に達する見込みで、2030年まで年平均41.9%(CAGR)で成長する見通しという点です。すでにほぼすべての既存データベースベンダーがベクトル検索に対応しています。3つ目は、ベクトル対応データベースを実運用または PoC(概念実証)で使う企業が市場の相当部分を占め、最もデータ活用が進んだ組織では導入率が54%に達するという点です。
この3つを束ねたのが「市場の転換点(Market Inflection)」という見方です。キーワード検索からハイブリッド検索への移行はもはやロードマップ上の将来課題ではなく、現時点で満たすべきアーキテクチャ要件になっている、というのがレポートの結論にあたります。

世界の企業の半数以上がベクトルデータベースを導入済み、もしくは PoC で検証中だとすると、当然「残りの半数はどうなっているのか」という問いが浮かびます。前提として、ほとんどの企業はすでに何らかのデータベースを持っており、その多くがベクトルに対応しています。つまり技術そのものはすでに手元にある状態です。それでも導入が進まない理由は、技術以前の組織的な事情にあります。
大きいのはデータへのアクセスです。業務データは Slack や CRM、各種データプラットフォーム、個人のラップトップ、専門の金融システムなどに散らばっています。それらを横断してセマンティックに問い合わせられるようにすること自体が組織的な難題です。加えて、ガバナンスやセキュリティといった制約も導入を止める要因になります。技術は揃っているが、組織のほうが追いついていない、という状況です。
企業はそもそも AI が自社のビジネスにとって何を意味するのかを、まだ手探りしている段階にあります。AI が何をもたらすのかという問いは、本カンファレンスを通じて繰り返し語られるテーマになります。

エンタープライズサーチがこれまで強みとしてきたのは、検索の速さです。適切なキーワードさえ入力できれば、目的の結果を比較的すばやく返してくれました。

問題は関連性です。速くは返ってくるものの、「ちょっと欲しかったものとは違う」という体験が常につきまといました。キーワードが少しでもずれると、求めていた結果にたどり着けないという限界です。セマンティック検索は、この関連性のギャップを埋める技術にあたります。語句の一致ではなく意味の近さで検索するため、入力した言葉が完全に正確でなくても、意図に沿った結果を返せます。

エージェント時代に検索が担うメモリ層としての役割


ハイブリッド検索が現在の到達点だとすると、その先にあるのはユーザーが意図を伝えるだけで、それに見合った結果が返ってくる体験です。利用者は欲しいものを言葉で示し、システムがそれに沿った答えを届ける。この方向性が、検索が向かう先として描かれています。

エージェントとエージェントオーケストレーション(複数のAIエージェントを連携させて一連のタスクを処理させる仕組み)が登場したことで、検索はこの流れの中で重要な役割を担う準備が整っています。位置づけとして想定されているのは、メモリ層、あるいはオーケストレーション層やエージェント層と呼べるレイヤーです。エージェントがこのレイヤーに降りてきて必要な情報を引き出し、ユーザーが求めるものを届ける。検索はその基盤として機能します。
ここで言うメモリ層とは、エージェントが推論や応答のために参照する知識の蓄積場所を指します。エージェント自身は会話の文脈を保持しても、企業の膨大なデータを丸ごと記憶しているわけではありません。必要なときに検索を通じてデータへアクセスし、根拠を取り出す。その役回りを検索が引き受けるという見立てです。

検索全般の今後について、Jim Curtis 氏は不安材料が見当たらないと述べています。視界に広がるのは晴れた青空であり、検索という概念そのものは変わるかもしれないものの、向かう先は明るいという見方です。

検索が目指すのは、結果を返すことそのものではなく、インサイト(洞察)を生み出すことです。単に該当ドキュメントを並べる段階から、ビジネス上の意思決定に結びつく示唆を引き出す段階へと進化していく。検索結果をビジネスインパクトへ変換するこの流れが、検索の次の到達点として位置づけられています。

まとめ

レキシカル検索の速さとセマンティック検索の関連性を組み合わせたハイブリッド検索が現在の到達点であり、ほぼすべてのデータベースがベクトルに対応した今、企業の検索戦略は字句一致から意味ベースへの移行を前提に組み直す段階に入っています。導入を分けるのは技術ではなく、散在するデータへのアクセスやガバナンスといった組織側の事情です。エージェントが必要な情報を引き出すメモリ層として検索が機能する時代に向けて、検索は結果を返すことから、ビジネス上のインサイトを生み出すことへと役割を広げていきます。